映画『愚か者の身分』――闇に生きながらも人間らしさを失わない若者たち

SNSを使った闇ビジネス、戸籍の売買、そしてそこに巻き込まれていく若者たち——。

映画『愚か者の身分』は、現代社会の裏側にある“見たくない現実”を突きつけながらも、どこかに希望を感じさせてくれる作品でした。

観ていて重く苦しい時間もありましたが、最後まで心に残る物語です。

愚か者の身分ポスター

あらすじとキャスト

主人公のタクヤ(北村匠海)とマモル(林裕太)は、SNSで女性になりすまし、身寄りのない男性から個人情報を引き出しては、戸籍を売りさばくという危険な仕事をしています。劣悪な環境で育った二人は、気づけば闇バイトの世界で生きるように。

タクヤにとって、この世界に足を踏み入れるきっかけを作ったのが、兄貴分の梶谷(綾野剛)。彼を頼りながらも、「いつか抜け出したい」と願っています。

しかし、そう簡単に抜けられるような世界ではなく——。

荒んだ日常の中で、それでも笑い合い、助け合う彼らの姿が胸を打ちます。


”闇”の現実と、それでも失わない人間らしさ

この映画の一番の見どころは、闇バイトや闇ビジネスの“現実味”です。「こんなこと本当にあるの?」と思いたくなるような世界ですが、ニュースで聞く事件と重なり、まるで現実の延長のように感じました。

鑑賞中はずっと緊張感が続き、重たい空気に押しつぶされそうになる場面も。正直、途中で目をそらしたくなります。

それでも、タクヤとマモル、そしてタクヤと梶谷の間にある絆や思いやりの描写が、息苦しさの中で小さな光のよう。闇の中にいながらも、人間らしさを完全には失っていない。その姿に、観終わったあとも心が温かくなりました。


北村匠海の俳優としての幅の広さ

北村匠海さんといえば、ついこのあいだまでNHK朝ドラ『あんぱん』でアンパンマンの作者やなせたかしさんを演じていました。やさしさや純粋さが印象的なその役とは真逆の、闇の世界に生きる青年タクヤ。まるで別人のような表情と空気感に、俳優としての幅の広さを感じました。

以前テレビ番組で、デビュー当時はオーディションに何度も落ち続けたという話をしていた北村さん。『君の膵臓を食べたい』で一気に注目を浴びました。

『君の膵臓を食べたい』を観たときの印象は、「なんてピュアな俳優さんなんだろう」ということ。その印象は今も残しつつ、この作品のような難しい役にも挑み続けています。

作品ごとにまったく違う顔を見せてくれるその姿勢、本当に素敵だと思います。これからの活躍にもますます期待したい俳優さんです。


重く、つらい描写の中にも、人間らしさや希望がしっかり描かれた『愚か者の身分』。

観終わったあと、しばらく心が静まりませんでした。

“愚か”と言われても、人を思う気持ちは決して消えない——そんなメッセージを受け取った気がします。


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