映画『開戦前夜』を鑑賞しました。
日本中のエリートたちが集められた「総力戦研究所」。
真珠湾攻撃の4か月前――彼らがシミュレーションを繰り返し、導きだした結論は「日本必敗」だった。
それなのに、なぜ日本は日米開戦に突き進んでしまったのか?
この映画はフィクションではあるものの、多くの事実と実在した人物をもとにつくられていて、当時の日本を感じることができました。

あらすじ
官僚・軍・民間から選ばれたエリートたちが集められた「総力戦研究所」。
彼らに課せられた任務は、模擬内閣をつくり、アメリカとの戦争を「予測」すること。膨大なデータをもとに、時に対立し合いながら、シミュレーションを繰り返す。
そして導きだした結論は、「日本の圧倒的敗北」。それは、想定外の「原爆投下」をのぞき、その後起きたことのほぼすべてを的中させるものだった。
それなのに、なぜ日本は突き進んでしまったのか。フィクションをまじえながらですが、映画のなかでそのときのことが描かれます。
主なキャスト
池松壮亮さん|宇治田洋一(うじた よういち)産業組合中央金庫 調査課長
摸擬内閣では「内閣総理大臣」に指名される。
軍部の圧力に対して大きなトラウマをかかえていて、最初はシミュレーションに消極的だった。しかし、多くの優秀な頭脳と出会い、膨大なデータから厳しい現実を知り、「日本必敗」の判断をくだす。
仲野太賀さん|椛島茂雄(かばしま しげお)同盟通信社 政治部記者
摸擬内閣では「内閣書記官長兼情報局総裁」を担当。
はじめは宇治田の消極的態度に批判的だったが、彼の苦悩を知り理解していく。新聞記者であり、開戦に向けて世論をつくっていく立ち位置にもあったので、自責の念も感じていた。
岩田剛典さん|村井和正(むらい かずまさ) 海軍少佐
海軍大学校を首席で卒業したエリートで、摸擬内閣では「海軍大臣」を担当。
アメリカとの圧倒的な国力の差を実感していて、日本は長期戦に耐えられないと冷静に判断。早い段階から「勝てない」と訴える。
中村蒼さん|高橋源一(たかはし げんいち) 陸軍少佐
摸擬内閣では「陸軍大臣」を担当。
いずれ植民地にされる前に日本は先に動くべきと「開戦」を強く主張していたが、宇治田の分析結果から現実を直視しはじめる。
キャストはほかにも、「総力戦研究所」を発案した陸軍中佐役に佐藤隆太さん、その上官・陸軍大将役に國村隼さん、陸軍大臣でのちに総理大臣となる東條英機役に佐藤浩市さんと、豪華な顔ぶれです。
戦争映画でありながら戦闘場面はなく、ほとんどが室内の会話劇。それでも飽きることなく、キャストのみなさんの魂のこもった演技に引き込まれました。
いったい何に呑み込まれたのか
自由闊達な議論を許された「総力戦研究所」が、膨大なデータ・事実をもとに導き出したシナリオは「日本必敗」。
――開戦後、緒戦の勝利は見込まれるが、その後の推移は長期戦必須。その負担に日本の国力は耐えれない。
その報告会に参加していた多くの人は、「そのとおりになる」と思ったのではないだろうか。
しかしながら、報告会で「総力戦研究所」メンバーが受け取ったのは、「これはあくまで机上の演習。実際の戦争では意外なことが起こるものであり、机上どおりにはならない」という言葉。
そして、日本は日米開戦に突き進んでいく。
なぜなのか? 何に呑み込まれてしまったのか?
―時代の空気に逆らい、異議を唱えることの難しさ
―自分の地位や立場を危険にさらしたくないという感情
―今さら引き返せないという心理
そして、開戦ムードが盛り上がるなか、やることを前提としたつじつま合わせの数字をつくっていくしかなくなった… このままではまずいと思いながら、誰も止めることができない。
戦後81年経った今も、この映画で描かれていることと同じようなことが、私たちの身近な社会や組織のなかで繰り返されているように感じます。
もしまた戦争に向かう空気がつくられ、それに逆らうことが難しくなってしまったら… そう考えると、とても怖い。
多くの人の命を簡単に奪ってしまう戦争。そんな不幸を繰り返さないために、私たち一人ひとりにできることは何だろうか。
そんなことを考えさせられる映画でした。
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