映画『汝、星のごとく』――スクリーン上で深まる小説の世界観

凪良ゆうさんの小説『汝、星のごとく』。
シリーズ累計発行部数200万部を超える人気小説が映画化されました。

物語の二人の主人公”櫂(かい)”と”暁海(あきみ)”を演じるのは、横浜流星さんと広瀬すずさん。大好きな小説がイメージどおりの配役で映画化される。はやく観たくて、公開直後に映画館へ。

少し時間が経った今も、温かくて、切なくて――そんな余韻が続いています。

横浜流星さんの映画化への想い

『汝、星のごとく』の完成披露試写会の様子をYouTubeで視聴したのですが、そこで横浜流星さんが語っていたこの映画への想いに感動しました。

横浜流星さんの想い
凪良先生の原作にふれるたびに、毎回心を救われ、自分を見つめなおすんですね。『汝、星のごとく』を読み終わった瞬間に、今この時代に届けるべきだと強く思って、そして素晴らしい原作ですので、必ず映画化すると思って。そのなかで自分が”櫂”として生きなければ後悔すると思い、凪良先生に手紙を送り、藤井監督にお願いして、素晴らしいキャスト・スタッフのみなさまが集って完成させられたことは、非常に幸せに思います。

凪良ゆうさん原作の映画『流浪の月』に出演した横浜流星さん。今回はご自身から凪良ゆうさんに想いを伝え、『汝、星のごとく』の映画化を実現させました。そして、監督は、映画『正体』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞と最優秀監督賞を一緒に受賞した盟友・藤井道人さんにお願いするという――

それほどの熱い想いからうまれた作品。「はやく観たい」という思いが高まりました。


小説『汝、星のごとく』

小説『汝、星のごとく』は、第20回本屋大賞を受賞し、シリーズ累計発行部数200万部を超える人気小説。

私も1年ほど前に文庫本を購入して読みました。細かい設定や内容は記憶があいまいになってきていますが、登場人物一人ひとりの印象は深く心に残っています。

とにかく人物描写が素晴らしくて。

瀬戸内の島で暮らす高校生の櫂と暁海。家庭に問題があり孤独を抱える二人は恋に落ちる。しかし櫂は漫画家になる夢を追って島を離れ、暁海は心に病を持つ母をささえるため島に残る。

愛する人と一緒に生きることと、自分自身の人生を生きることの間で揺れ動く二人。15年もの愛と人生を描く、切ないラブストーリーです。

二人を見守り支えになってくれる北原先生、暁海の夢を応援してくれる瞳子さん、櫂とともに夢を追う尚人、櫂の才能を信じ続ける編集者・植木さんと二階堂さん。そして、苦しめられながらも突き放すことができない二人の母親。

櫂と暁海も、二人を取り囲む人たちも、誰ひとり枠にはまった人物として描かれません。枠からはみだしてしまう人生。もがいたり、苦しんだり、達観したり、それでも楽しんだり。そんな生きざまが、一人ひとり違う個性を持つ人物として、深みのある描かれ方をしています。

決してハッピーストーリーではなく、むしろ読んでいてつらくなる場面が多いのですが、この深みのある人物描写に感情が揺れ動き、小説の世界観に没入してしまいます。


映画『汝、星のごとく』

大好きな小説の映画化。櫂を演じる横浜流星さんの想いを知り、監督が藤井道人さん、暁海を演じるのが広瀬すずさんということで期待しかありませんでした。

ただ、映画化で心配だったこともあります。櫂と暁海以外の登場人物もみな”普通”の枠をはみだしていて、演じるのが難しそう――

でもスクリーンにあらわれたキャストのみなさんは、演じきっているというより、小説に登場する人物そのままのよう。素晴らしいキャスティングでした。

櫂     横浜流星さん
暁海    広瀬すずさん
櫂の母親  尾野真千子さん
暁海の母親 木村佳乃さん
瞳子さん  石田ゆり子さん
北原先生  長谷川博己さん
尚人    松村北斗さん
植木さん  濱田岳さん
二階堂さん 中村アンさん

特に印象に残るのは、北原先生と瞳子さん。小説を読んだときからこの二人に惹かれていたのですが、長谷川博己さんと石田ゆり子さんが演じる北原先生と瞳子さんは、リアルな人物としてさらに魅力を増し、目の前にあらわれてくれました。

北原先生も瞳子さんも決して正しいだけの人ではなく、世の中の枠からはみ出して生きている。でもこの二人の言葉が、櫂と暁海を救い、背中をおしてくれる。

長谷川博己さんと石田ゆり子さんが紡ぐ「北原先生」「瞳子さん」としての言葉。心に響きました。

横浜流星さん、広瀬すずさんも素晴らしかったし、ほかのキャストのみなさんも。そして、スクリーンに映し出される瀬戸内の美しい風景。小説を読んだときに思い浮かべていた人物や風景がリアルに目の前にあらわれ、『汝、星のごとく』の世界が深まりました。

原作者の凪良ゆうさんが映画の試写をみた感想を語っている動画をみたのですが、共感しかありません。

凪良ゆうさんの言葉
自分の脳内にしかなかった風景が想像以上に色彩豊かに広がっていて、主演の横浜流星さんと広瀬すずさんと、それぞれ演じてくださった俳優さんの独自のカラーというものが役に命をふきこんでくださったようで、小説とはまた別の新しい『汝、星のごとく』の世界を見せていただいて、本当に感動しました。

「脳内にしかなかった風景が想像以上に色彩豊かに広がる」という感覚。そして、小説の世界観をさらに深めて、新しい『汝、星のごとく』の世界が見えるという感覚。

私もそんな感覚にひたることができました。本当に素晴らしい映画でした。


小説『汝、星のごとく』には、『星を編む』という続編があります。

『汝、星のごとく』では語り切れなかった物語。櫂と暁海を見守り続けた北原先生の過去、櫂と尚人の才能を信じ続けた植木さんと二階堂さんが繋いだもの、そして暁海の未来。

『汝、星のごとく』の世界が、深みを増しながら広がっていく物語です。

映画を鑑賞された方は、ぜひ読んでみてください。

星を編む

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